こだわりアカデミー
1/fゆらぎは謎だらけですが 非常に大きな可能性をもっています。
F分の1ゆらぎの謎にせまる
東京工業大学名誉教授
武者 利光 氏
むしゃ としみつ

1931年東京都生れ。54年東京大学理学部物理学科卒業後、同年、日本電電公社電気通信研究所研究員、64年マサチューセッツ工科大学研究員、65年スウェーデン王立工科大学研究員、66年RCA東京研究所研究員に。67年東京工業大学助教授、教授を経て名誉教授に就任。1/fゆらぎの草分け的存在で、77年には第1回「1/fゆらぎに関する国際会議」を日本で開催し、以降2年ごとに世界各地で行なっている。また、94年には(株)脳機能研究所、(株)ゆらぎ研究所を設立し社長を兼任。著書に『ゆらぎの発想〜1/fゆらぎの謎に迫る』(94年、日本放送出版協会)、共著に『ゆらぎの科学』(91年、森北出版)など。
1998年11月号掲載
日本の伝統的な住宅には理想的な1/fゆらぎが
—— 先生も独自の方法で、この1/fゆらぎを利用した製品を考案されたそうですが。
武者 はい、もういくつか商品化したものもあります。
1/fゆらぎ理論を取り入れた模様のブラウスなどは好評でした。今日、私がしているネクタイも、1/fゆらぎを生かした模様です。また、1/fゆらぎを利用して、木綿糸に手撚りの感じを持たせることにも成功しました。これで織った布は、麻のような手触りになり、最近とても評判がいいんです。
その他、1/fゆらぎ理論を入れて、デパートの広告ポスターをデザインしたこともありますし、現在、道路空間デザインをし、一部完成しています。
—— 今、どこも電柱だとか街路樹などは、規則正しく一直線に、そして等間隔で並んでいます。それに1/fゆらぎを取り入れたら街を歩くのが楽しくなりそうですね。
武者 きっとそうなります。実際はすでに道路空間の模型で、1/fゆらぎを持つように電柱や街路樹を配置しましたら、そこを歩く時、林の中を歩くのと同じ感覚が得られると実証されています。実際にその道路空間を目にしたら、「歩いてみたい」という気持ちが生れてくるはずです。
このように、1/fゆらぎは、洋服、街づくりをはじめ、居住・道路空間デザインなど、いろんなことに活用できるものなんですよ。
—— 今後もいろんなことに応用できそうですし、1/fゆらぎの持つ可能性は未知数ですね。
武者 本当に非常に大きな可能性を秘めています。最近、新たな面白い発見がありました。ロシアの研究者が、1/fゆらぎをする磁場をつくりまして、その中に、培養したある細胞を入れておきましたら、その細胞がガンに対して強い体質になったという報告がありました。
これから、もっとたくさん1/fゆらぎに関する研究が行われて、いろんな1/fゆらぎの謎が解けてきますよ。
—— それは非常に楽しみですね。
1/fゆらぎの研究をされている人は、世界中にたくさんいらっしゃるんですか。
武者 他の学問に比べると、あまり多くないですね。私が声をかけて始まった「1/fゆらぎに関する国際シンポジウム」は、20年以上にわたって2年ごとに世界各国持ちまわりで開催されていますが、出席者は200名から300名くらいです。
—— 先生が、今後最も力を注いでいかれる研究テーマは何ですか。
武者 まだまだ1/fゆらぎは謎だらけですが、非常に大きな可能性を持っています。それを追究するのはもちろんですが、その原点、1/fゆらぎの発生するメカニズムを解き明かしたいですね。
—— それは、とても興味があります。なぜ1/fゆらぎが存在するのか、私達生命体や宇宙全体にとってどんな役割を持つのかなど、是非とも突き止めていただきたいですね。
さらなるご活躍を期待しております。本日はありがとうございました。
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