こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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おなかに回虫などがいると アトピーや花粉症にならないのです。

役に立つ寄生虫

東京医科歯科大学医学部教授

藤田 紘一郎 氏

ふじた こういちろう

藤田 紘一郎

1939年中国東北部(旧満州)生れ。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学伝染病研究所(現・医科学研究所) 大学院終了。テキサス大学で研究後、金沢医科大学、長崎大学医学部教授を経て、87年より現職。専門は寄生虫 学と熱帯病学。日本医学会議のメンバーとして、マラリア、フィラリア、住血吸虫、成人T細胞白血病やエイズ関 連の免疫研究の傍ら、寄生虫と人とのより良い共生をPRしている。主な著書に「笑うカイチュウ」(94年、講談社−写真下−)、 「ボンボン・マルコスの犬」(96年、ルック)、「癒す水、蝕む水」(96年、NHK出版−写真下−)、 「空飛ぶ寄生虫」(96年、講談社)、「体にいい寄生虫」(97年、ワニブックス)等がある。

1997年4月号掲載


イヤイヤ行った調査団の荷物持ちが「虫」との出会い

──先生の著書「笑うカイチュウ」「空飛ぶ寄生虫」を大変楽しく読ませていただきました。私も小学生時代、田舎に疎開していて、口やお尻から虫を出したのをはっきり覚えています。

「寄生虫」とか「回虫」に馴染みがあって、懐かしい気もいたしました(笑)。

本を読んで、とっくに日本から姿を消したものと思っていた虫達が、最近また復活し始めたことを知り、驚いているんです。と同時に、先生がなぜ、あまり目立たないこの分野のご研究をこれまで続けてこられたのか、ちょっと興味を持ちました。

藤田 実は私も、もともとこういう研究をやろうと志していたわけではないんです。この大学の学生だった頃、私は柔道部に在籍していまして、卒業後は整形外科にいこうと決めていました。

ところが、ある日、加納先生という伝染病や寄生虫の研究をされている先生−後にこの学校の学長にもなられましたが−とトイレでばったり一緒になりましたら、「夏に風土病の調査団で奄美に行くが、誰か荷物持ちはいないか」と尋ねられまして、「それなら柔道部から誰か出られるか聞いてみます」と答えたんです。

ところが、皆に聞いたら、船は嫌いだしお金もくれないんじゃ・・・ということで、誰も行きたがらないんです。それっきりにしていたら、ある日またトイレで先生にばったり会ってしまった。「おまえ、あの件どうなった」と聞かれたので、「誰もいません」と答えたら、「ここで一緒にトイレに入ったのが運のつきだ」ということで、強引に調査団の荷物持ちをやらされることになったんです(笑)。

そこで私が見たのはバンクロフト糸状虫というフィラリア(線虫)が人の身体に寄生して起こす「バンクロフト糸状虫症」にかかっている人達でした。

足が象のように太くなったり、陰嚢が巨大化してひどい目にあっている人達を見て、ものすごく衝撃を受け、思わず「これは誰かが何とかしなくては・・・」と言いましたら、加納先生が東大伝染病研究所の先生に電話して「藤田というのが大学院にいくから」と強引に決めてしまったんです(笑)。断わることもできなくて・・・。

だから、好きで始めたというわけではないんです。

──でも、そのまま今日まで辞めずにきたというのは・・・。

藤田 やはり奄美で見たフィラリア症ですね。その病気をなぜあんな虫が起こしているのかと、「虫」に興味を持つようになったんです。南の島で開業しながら研究してもいいな、と考えた時期もありました。

で、テキサス大学に行って研究したりしているうちに、日本の大学で寄生虫学を教える人がだんだん少なくなったものですから、別に学者になりたくはなかったんだけど、呼び戻されて教職に就いたんです。

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近著紹介
近況報告

※藤田 紘一郎先生は、2021年5月にご永眠されました。生前のご厚意に感謝するとともに、慎んでご冥福をお祈り申し上げます(編集部)

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