こだわりアカデミー
多様な機能が入り混じった港町。 そこには日本の都市を蘇らせるヒントがあります。
水辺や路地が街に活力を与える
法政大学工学部建築学科教授
陣内 秀信 氏
じんない ひでのぶ

じんない ひでのぶ 1947年、福岡県生れ。73年−75年、イタリア政府給費留学生として、ヴェネツィア建築大学に留学、西洋建築を学ぶ。76年、ユネスコのローマ・センターに留学。帰国後、83年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。東京大学工学部助手、法政大学工学部建築学科助教授を経て、現職に。専門はイタリア建築・都市史。特定非営利活動法人歴史建築保存再生研究所理事。著書に『イタリア都市再生の論理』(鹿島出版会)、『都市のルネサンス』(中央公論社)、『東京の空間人類学』(筑摩書房)、『ヴェネツィア』(講談社)、『シチリア』(淡交社)、『迷宮都市ヴェネツィアを歩く』(角川書店)など、共著に「水辺都市」(朝日新聞社)、「江戸東京のみかた調べかた」(鹿島出版会)など多数。
2007年4月号掲載
ヴェネツィアに感動し港町の研究の道へ
──先生は建築史家として、イタリアを中心に、世界の都市研究を行なっているそうですね。
陣内 建築を学んでいると、歴史的な建物を見る機会に恵まれるんですよ。
大学時代にイタリアへ行き、自然や地形を巧みに利用したヴェネツィアの都市空間を見て、深い感動を覚えました。以来、港町を中心とした世界の都市形成について研究するようになったのです。
──港町のどんなところに魅力を感じるのですか?
陣内 港町には、空間のあり方や風景の面白さなど、都市形成において重要な要素が集積しています。
──とおっしゃいますと?
陣内 灯台、波止場、船着き場、市場、倉庫といった港町特有の施設が、人々の生活する町家と上手く混ざり合って、独特の雰囲気を持った高密度な空間を作り出しているのです。
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水の都・ヴェネツィアの街並み。細い運河があちこちに流れており、自然を巧みに利用している(写真:編集部にて撮影) |
中世や古代に遡るものも多く、都市の風景の中に、さまざまな歴史の重なりを見ることもできるのです。
──歴史的なロマンがあり、それぞれで個性的な風景が楽しめるのですね。
陣内 また港町は、物以外にも、人と情報の流れや、人間の行動心理がよく考えられて作られているので、ノスタルジーや楽しさが感じられ、われわれの想像力をかき立てる力があります。
──確かに、水辺の空間を訪れると、自然と居心地の良さを感じます。
陣内 さらに、季節や時間による表情の変化も楽しめ、日没の光景が美しい場所も多いなど、自然との調和も図られています。
──港町には、魅力的な都市を形成する、重要なファクターが組み合わさっているんですね。
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『ヴェネツィア』(講談社) |
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