こだわりアカデミー
自然とともに暮らしている東南アジアでは 資源・自然を「絶やさない」という発想が当り前なんです。
エビと自然破壊−収奪から共生へ
東南アジア社会研究者 上智大学外国学部教授
村井 吉敬 氏
むらい よしのり

1943年千葉県生れ。66年早稲田大学政経学部卒業後、75−77年インドネシア国立パジャジャラン大学へ留学。帰国後上智大学国際関係研究所助手などを経て、83年同大学外国語学部助教授、88年教授に。現在、教鞭を執る傍ら、アジア太平洋資料センター共同代表、同センター発行の月刊誌「オルタ」の執筆も行う。著書に『スンダ生活誌』(78年、NHKブックス)、『小さな民からの発想』(82年、時事通信社)、『エビと日本人』(88年、岩波新書)、『サシとアジアと海世界』(98年、コモンズ)などがある。
1998年8月号掲載
エビの養殖で消えてゆくマングローブ林
──しかし、あまりエビが獲れないとはいえ、昔ながらの投網漁法などに比べれば、底引き網漁法は効率も良いというわけですね。
村井 ところが、一方で小さなカヌーに乗って行う投網漁や、刺し網漁で生活している漁民は大打撃です。エビは沿岸近くの大陸棚の浅瀬にいる生き物ですから、そこを漁のためトロ−ル船が行ったり来たりする。沿岸の漁民にとっては迷惑な話です。
エビはお金になりますから、このままでは力の弱いものはつぶされかねない。そういう危惧からトロール船を禁止する地域も出てきました。
──一方、かなり古くから養殖も行われているとか…。
村井 海辺にあるマングローブ地帯を切り開いて養殖池をつくっています。もともとは、自分たちの食用にミルクフィッシュという高タンパクの魚を育てていたのですが、そこにたまたま海の潮に乗って稚エビが入ってきた。それで、エビを育てて食べるようになったというのが始まりのようです。
マングローブを切ってつくったというと、自然破壊ともとられがちですが、人間がその池をうまく生かし、何百年も続けてきていることを考えると、容認できる範囲ではないかと思うんです。
──逆にこの伝統的な養殖池は、すでに生態系の中にある程度取り込まれていると言えますね。
村井 そうなんです。
しかし、最近ではエビ生産工場的な養殖池が大変増えました。これは、日本のクルマエビ養殖が起源です。
プールのような人工池の中にたくさんの稚エビを放流し、人工飼料によって育てるやり方で、その後、その技術をもとに台湾でアレンジされました。それが東南アジアに伝わり次々にマングローブ林をつぶして池がつくられるようになったんです。
しかし、1つの池で非常にたくさんのエビを飼うため、エビの病気を誘発し、また土質も悪くする。早いものでは3年で使いものにならなくなります。すでに台湾ではほとんど生産できなくなっています。例えばタイでは、この20年間で200万ヘクタールあったマングローブ林が、半分の100万ヘクタールになってしまった。それでも養殖は続けられています。
──エビの養殖が、結果的にマングローブ林の破壊をも引き起こした。それも日本向けのエビを育てているわけですから、日本が破壊に加担していると言っても過言ではないですね。
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