こだわりアカデミー
高速道路では、車間距離「40m」が渋滞のボーダーライン。 「急がば回れ」を科学的に証明した「渋滞学」とは!?
車間距離「40m」が渋滞のボーダーライン
東京大学大学院工学系研究科教授
西成 活裕 氏
にしなり かつひろ

1967年東京都生れ。95年東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程終了後、山形大学工学部機械システム工学科、龍谷大学理工学部数理情報学科、ドイツのケルン大学理論物理学研究所を経て、2005年より東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻に移り、09年より現職。数理物理学のほか、車、人、インターネットなどの流れに生じる「渋滞学」や、ビジネスマンや主婦の生活にある無駄を改善する「無駄学」を専門とし、世界最高権威の米物理学専門誌『フィジカルレビューレターズ』などに論文を多数掲載している。著書に『渋滞学』(新潮選書)、『とんでもなく役に立つ数学』(朝日出版社)、『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』(あさ出版)など。現在、多くのテレビ、ラジオ、新聞などのメディアで活躍中。
2011年11月号掲載
『譲り合い』の精神を子どもの頃から浸透させる
──ところで、高速道路のほか、人の集まる催し物や、非常時や災害時に起こる「人の流れ」の渋滞も、大きな問題の一つですね。
西成 はい。超満員の電車のドアが開いた時、皆が一斉に出ようとして出入口が一瞬にして詰まり、誰も出られなくなってしまったという経験をしたことがありませんか? お互いの肩がドアを囲むようにアーチ状になって、それ以上前に進めない。さらに、外から乗り込む人もいて、車内は大パニック状態という・・・。
──「我先に」という気持ちが働き、大混乱になってしまうんですね。
西成 皆が皆、速く、速くと競争ばかりしていては、結局は誰もが損をしてしまいます。こうならないために必要なのは、『譲り合い』の精神です。
──よく分ります。
しかし現在は、自分の得ばかりを求めるあまり、『譲り合い』の心をなくした人が増えている気がします。そうしたマナーは、昔は子どものうちから親や近所に住む大人達に教えられたものですが、今は核家族化が進み、家庭における教育力が乏しくなっていますね。
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(写真上)スクランブル交差点などで、違う方向に歩く群集が交差する様子を観測するために、高校生に協力してもらい実験を行なった。(写真下)群集が曲がり角で対面した時に発生する混雑について実験している様子〈写真提供:西成活裕氏〉 |
西成 だからこそ、代わりに誰かが機会を設けて教育を手助けしていくこと、それも、子どものうちから徹底して行なうことが必要だと思うんです。
その一助となれればと考え、現在、全国の小学生から高校生までに渋滞や混乱を避ける方法やマナーとともに、社会で共有すべき常識などを講義して回っています。
特に「利他」精神。これは、集団の中では、個人が少しだけ利他の心で行動すれば結局は皆が得をすることができるという考え方です。逆にいうと、皆が利己的に行動すれば益が減ってしまうのです。
「利他」の精神は、より良い社会生活を営むために重要であることはいうまでもありません。もとより、『譲り合い』の精神は渋滞緩和のためにも不可欠な要素です。
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『渋滞学』(新潮選書) |
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