こだわりアカデミー
雷の発生メカニズムは分っているものの まだまだ謎の部分も多いんです。
宇宙からの雷観測
大阪大学大学院工学研究科教授
河崎 善一郎 氏
かわさき ぜんいちろう
1949年、大阪府生れ。73年、大阪大学工学部通信工学科卒業、78年、大阪大学大学院工学研究科通信工学専攻博士課程修了。工学博士。名古屋大学空電研究所助手、スウェーデン国ウプサラ大学気象研究所客員講師を経て、89年、大阪大学工学部講師。91年、大阪大学大学院工学研究科助教授、2000年、同研究科教授。現在に至る。93年、日本大気電気学会学術賞、98年、電気学会進歩賞、レーザ学会進歩賞を受賞。
2005年8月号掲載
光と雷鳴の正体
──ところで、落雷のとき、稲妻はなぜギザギザとした形になるのですか?
河崎 落雷は、およそ100万分の1秒間進んで、10万分の1秒間休止します。そして、また100万分の1秒の速さで進み、それを繰り返して地面に向かって落ちていきます。
──休み休みだから、枝分かれや、折れ曲がった形になるというわけですね。
いずれもオーストラリア・ダーウィンでの落雷の様子。世界中で毎秒100個の落雷があるといわれている(写真提供:河崎善一郎氏) |
では、落雷のときに、電光と雷鳴が伴うのはなぜですか?
河崎 一瞬で空気の中を通る落雷は、加熱電気のかたまりで、とても高い温度を持っています。
雷によって暖められた空気は、2万−3万度という高温になり、電気エネルギーの一部が光エネルギーに変り、光るのです。
──それがピカッと光る正体なんですね。
河崎 はい。一方、雷鳴は、稲妻が走った軌跡部分の空気が加熱し、瞬間的に爆発膨張すると、周囲に強い衝撃音波を起こします。これが雷鳴の正体です。
──雷鳴がゴロゴロと数秒間も鳴り続けるのはなぜですか?
河崎 稲妻は、ジグザグに折れ曲がっているため、折れ曲がりごとに特定の方向に強く伝わります。
だから、すべての音源からの音が私達に届くまでに時間差が生じて、ゴロゴロと聞こえる訳です。
──ところで、1回の落雷で生じる雷のエネルギーはどのくらいなのですか?
河崎 数字で表しますと、電流は1千−20万アンペア。電圧が200万−2億ボルトで、一般家庭の電圧の2−100万倍です。
これを、家庭用の電力に推定すると、1世帯の2月分くらいの消費量にあたります。
このエネルギーの大部分は、大空いっぱいにまき散らされ、光や音のエネルギーとなります。
──それはもったいない。それだけのエネルギーなら、何とか利用できないものでしょうか?
河崎 確かに、世界中で毎秒100個の落雷があるといいますから、これを利用できればすごいエネルギー量に違いありません。雷は電気なので、溜めるなり、熱に変えるなり、何らかの利用方法があります。
しかし、現状ではとても無理な話です。
──なぜでしょうか?
河崎 いつどこに雷が落ちるのか、事前には予測できませんし、まして、みんなが使えるだけのエネルギーを集め回ることは、不可能だからです。
例えば、1人に「1円欲しい」といえばもらえるでしょう。日本中を集め回れば1億2000万円になり、大金持ちになれます。しかし、1人に1分の時間をかけたとしても、生きているうちには集めきることはできません。
雷も同じように、1個ずつは可能でも、みんなが利用できるだけ集めるのは不可能なのです。
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