こだわりアカデミー
謎が多い海洋生物の生態。毒とアレルギーの研究から その謎解きをしていきたいと思っています。
魚貝類の毒とアレルギー
東京水産大学食品生産学科教授
塩見 一雄 氏
しおみ かずお

しおみ かずお 1947年、岡山県生れ。70年東京大学農学部水産学科卒業、75年同大学院農学系研究科水産学専門課程博士課程修了。日本学術振興会奨励研究員、米国ロードアイランド大学薬学部博士研究員を経て、91年より現職。農学博士。著書に『魚貝類とアレルギー』(2003年成山堂書店)、共著に『海洋動物の毒−フグからイソギンチャクまで−』(01年、同)など。
2003年6月号掲載
イモガイ、クラゲ、イソギンチャク。「刺毒」の正体はタンパク質
──食べて問題となる毒ではなく、刺されて危ない毒を持っている生物もいますよね。すぐ思い浮かぶのはクラゲやイソギンチャクですが…。
塩見 他にも、魚ではゴンズイ、ミノカサゴ、オコゼ、貝ではイモガイなどが有名です。
──それらの毒は、もともとどういう成分からできているのですか?
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ヒトデ類の中で唯一刺毒を持つものとして知られるオニヒトデ。直径20−60cmの体に9−23本の腕を持ち、体表は無数の棘で覆われている (円内は拡大写真。写真提供:塩見一雄氏) |
塩見 基本的にはタンパク質、あるいはもっと分子量の小さいペプチドが原因物質です。タンパク質は不安定で研究が難しいため詳しい構造が分っているのはわずかですが、ペプチドはかなり構造も解明できています。
例えば、毒矢を使って魚などを刺して食べるイモガイでは、1種類のイモガイの毒腺に50−200種類のペプチドが含まれていて、その多くが毒成分として機能しているといわれています。世界には約500種類のイモガイが生息しているので、少なくとも25000程度のペプチド毒が存在することになります。
──気の遠くなるような数字ですね。しかし、毒と薬は表裏一体といいますから、今後研究が進めば医薬品なども開発されて、毒が有効に使えることもあるのでは?
塩見 イモガイやイソギンチャクの毒は、神経科学の研究用としてすでに市販もされていますよ。
ただ、私個人としては、最初から実用化する目的で研究をしない方がいいと思っています。まずはどういう成分があって、それがどういう風に働いているのかを純粋に見ていって、その結果として医薬品に使える可能性が出てくるのがベストです。特に若い人には、自分の知的好奇心のために研究してもらいたいと思っています。
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『魚貝類とアレルギー』(成山堂書店) |
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