こだわりアカデミー
青酸カリのような人工の毒より、自然界由来の毒の方が はるかに強いものがたくさんあるのです。
毒と薬は表裏一体。身近に存在する自然界の毒
日本薬科大学教授
船山 信次 氏
ふなやま しんじ
1951年仙台市生れ。75年東北大学薬学部卒。80年同大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬剤師、薬学博士。イリノイ大学薬学部博士研究員、 北里研究所室長補佐、東北大学薬学部専任講師、青森大学工学部教授、弘前大学客員教授(兼任)などを経て、04年から現職。02年より Pharmaceutical Biology (USA) 副編集長。主な著書に「アルカロイド―毒と薬の宝庫」(共立出版)、「図解雑学 毒の科学」(ナツメ社)、「毒と薬の科学―毒から見た薬・薬から見た毒」(朝倉書店)、「毒と薬の世界史」(中公新書)など。現在、高等植物を中心に、その他、微生物由来の抗生物質など、天然物を起源とする有用な天然有機化合物の単離・精製、および化学構造の研究を行なっている。特に有用な物質が多い「アルカロイド」と称さ れる一群の天然有機化合物に着目する一方、「薬毒同源」の考えから、種々の植物由来の有毒成分を明らかにする研究も実施している。
2008年12月号掲載
実は身近に存在している「毒」
──先生は「薬学」の専門家でありながら、その延長で「毒」についてもご研究されていると伺っております。
食の安全が脅かされる事件が多発していることもあり、「毒」には暗いイメージが付きまとっていますが、先生は「毒」をどのようにお考えでしょうか。
船山 「毒」は”怖い””恐ろしい”といったイメージが強いかもしれませんが、実は非常に身近な存在です。
そもそも「毒」というのは、人間の都合で命名したに過ぎません。生体に何らかの作用を及ぼす化合物の中で、私達に芳しくない影響を与えるものを「毒」、都合の良い働きをする場合を「薬」と呼んでいるだけです。つまり、毒と薬は表裏一体で、これを私は「薬毒同源」と唱えています。
──「毒にも薬にもなる」というような表現には、そうした由来があるのですね。
毒にはどのような種類があるのですか。
『毒と薬の世界史』(中公新書) |
船山信次先生が新著『<麻薬>のすべて』(講談社現代新書)を上梓されました。麻薬に関する基礎知識をはじめ、麻薬の歴史や人間との関わりなど、博物学的かつ正確な知識が紹介されています。また、『毒草・薬草事典』(サイエンス・アイ新書)も出版。人間の使い方次第で、毒にも薬にもなる植物ですが、同書では、国内で見られる代表的な毒草・薬草についてその奥深さが詳細に紹介されています。
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