こだわりアカデミー
和食の代表的な調味料「醤油」は、 日本の「国菌」である麹菌が生み出したのです。
「醤油」の美味しさの謎に迫る
東京農業大学短期大学部醸造学科教授
舘 博 氏
たち ひろし

1953年京都府生まれ。77年東京農業大学農学部醸造学科卒、同大学院農学研究科博士前期課程農芸化学専攻修了。同大助手、講師などを経て、2002年教授に。10年から短期大学部部長。同年「醤油功労賞」受賞。万能調味料の謎を解くため、研究一筋40年、自他ともに認める「醤油博士」。著書に『しょうゆの絵本』(農山漁村文化協会)、『しょうゆが香る郷土料理』(日本醤油協会)など。
2014年2月号掲載
舘 はい。日本人はアレンジ好きですから、中国から伝来した醤をヒントに、大豆を原料に味噌をつくりました。その味噌の桶に溜まった汁を搾った「溜まり」が、室町時代、独立した液体調味料の「溜醤油」に発展したといわれています。
麹菌はわが国の「国菌」。美味しい醤油は「麹」から生まれる
──ところで現在、私たちが親しんでいる「濃口醤油」や「淡口醤油」なども、大豆からつくられているんですか?
舘 醤油の原料は大豆だけだと思っておられる方が多いようですが、大豆と食塩、さらに小麦も重要な原料となります。大豆と小麦に麹菌を生やした醤油麹を食塩水に仕込んで発酵、熟成して醤油はできます。
──麹菌というのは、カビの一種ですよね?
舘 そうです。カビと一口に言ってもたくさん種類があるのですが、醤油をつくる際には、その中でも麹菌「Aspergillus oryzae(学名:アスペルギルス・オリゼ)」を使用します。このカビのおかげで、日本特有の素晴らしい食文化が生まれたと言っても過言ではありません。
2006年10月には、日本醸造学会は麹菌を、わが国の「国菌」と認定しました。
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麹菌の電子顕微鏡写真(8,000倍)。麹菌が米表面を酵素を分泌しながら出入りしている様子を示したもの〈写真提供:舘博氏〉 |
──ところで、先生の醤油の研究はどういったものなのでしょう。
舘 醤油の美味しさの秘密を解明したいと思っているんです。
醤油の美味しさには、「旨味」「甘味」「酸味」「香り」という4つの要素があり、これらが味と香りのバランスが良い醤油をつくっています。「旨味」については、麹の酵素がどう関わっているのか分かっていましたが、詳細な機構については解明されていなかった。醤油のその「旨味」をつくり出す酵素を見つけようと、私は40年間、研究してきたのです。
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『しょうゆの絵本』(農山漁村文化協会) |
舘 博先生は、2019年3月に退職されました。
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