こだわりアカデミー
筋肉構造や体内成分の分析から 刺身の「おいしさ」を裏付ける
刺身のおいしさを科学する
昭和学院短期大学学長
畑江 敬子 氏
はたえ けいこ

1941年生まれ。お茶の水女子大学家政学部卒。同大学大学院家政学研究科修士課程修了、理学博士。86年お茶の水女子大学助教授、97年同大学教授に就任。2006年和洋女子大学家政学部教授、12年より現職の昭和学院短期大学学長に就任。06〜12年内閣府食品安全委員会委員。著書 『さしみの科学―おいしさのひみつ』(成山堂書店)、『食事設計と栄養のための調理科学実験』(光生館)、「スタンダード栄養・食物シリーズ6 調理学」(東京化学同人)。
2015年11月号掲載
海に囲まれ魚の種類も豊富。生魚を楽しむのは日本だけ
──先生の著書『さしみの科学』を興味深く拝読させていただきました。刺身を科学する、意外なテーマですね…。
畑江 私の専門は調理学で、どんな食材を選び、それをどういう風に調理すればおいしい食べ物になるかを科学的に分析する学問です。もちろん、「魚」も食材の一つですから、刺身も科学しているんですよ。
──刺身といえば、居酒屋にも高級料亭にも必ずメニューにありますね。日本人にとっては数ある料理の中で、かなり特別で身近な存在といえるのではないでしょうか?
畑江 そうですね。海外にもカルパッチョのように生魚にオイルやお酢などのソースをかける料理はありますが、日本以外で、生の魚をこれほど楽しんでいる国はありません。海辺に近い田舎などで生魚を食べている習慣はあるかもしれませんが、洗練された料理まで発展したのは日本だけだと言えますね。
──それはなぜ? 日本の国土が海に囲まれていて、人々の暮らしが海辺に近いからでしょうか?
畑江 そうですね。海に囲まれている上に、捕れる魚の種類がとても多い。動物性たんぱく質を摂取するためには、日本人にとって魚はとても身近な素材でした。また、日本は風土的に牧畜の習慣がなく、歴史的にも仏教思想伝来で獣肉食が敬遠されていた影響もあったと考えられます。
──なるほど。そう聞けば、確かに日本で刺身文化が発展したのは、自然な成り行きだったとも言えますね。
畑江敬子先生は、2016年3月に昭和学院短期大学を退職されました。
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