こだわりアカデミー
世界中で食べられているジャガイモ。 実はインカ文明など、人類の歴史に多大な影響を及ぼした 食物なのです。
ジャガイモがつくったインカ文明
民族植物学者 国立民族学博物館民族文化研究部教授
山本 紀夫 氏
やまもと のりお

やまもと のりお 1943年、大阪府生れ。70年、京都大学農学部農林生物学科卒業、76年、京都大学大学院博士課程修了。78年、国立民族学博物館助手、82年、助教授を経て現職。主な著書に『インカの末裔たち』(92年、日本放送出版協会)、『ジャガイモとインカ帝国 文明を生んだ植物』(2004年、東京大学出版会)。編著に『木の実の文化誌』(92年、朝日新聞社)、『酒づくりの民族誌』(95年、八坂書房)、『ヒマラヤの環境誌−山岳地域の自然とシェルパの世界』(2000年、同)など多数。
2004年6月号掲載
世界の歴史に影響を及ぼす
──ジャガイモが世界に広まったのは、いつ頃のことなのでしょうか?
山本 実はほんの300−400年前です。
始めは食べ物としてではなく、観賞用の花としてヨーロッパなどへ広まっていきました。
──では何がきっかけで、食用として世界で栽培されるようになったのですか?
山本 飢饉や戦争による影響だと思います。
ヨーロッパ北部は、寒冷な土地で、食糧の生産性が低く、18世紀頃まで頻繁に飢饉が起きていました。そこで、領土拡大のために、戦争も度々行なわれ、畑は荒廃し、しばしば食料不足になったわけです。
ジャガイモは、そうした厳しい土地でも栽培でき、栄養価も優れていることから、ドイツやアイルランド、ロシアなど、一気に世界へ広まり、歴史に影響を及ぼしたのです。
──歴史への影響としては、例えばどんなことが挙げられますか?
山本 日本でいえば、北海道の開拓は、ジャガイモ抜きには考えられません。イギリスでも、産業革命に与えた影響は大きいと思います。
また、アイルランドでは19世紀中頃、ジャガイモの病気が発生し、収穫がなくなったことで、100万人が餓死し、100万人がアメリカへ移住したという大惨事まで起きています。
──歴史の裏にはジャガイモの存在があったのですね。
最後に先生の今後のご研究について、教えていただけますか?
山本 これからは、アンデスを中心に、チベットやヒマラヤ、アフリカ、ヨーロッパなど、世界の山岳地域を回り、人々の暮らしを見て、その共通点や違いなどについて研究していきたいと思います。
──それは楽しみですね。これからもご活躍を期待しております。
本日はジャガイモの奥深さを知ることができました。貴重なお話ありがとうございました。
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『ジャガイモとインカ帝国 文明を生んだ植物』(2004年、東京大学出版会) |
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