こだわりアカデミー
犯罪者プロファイリングは、 捜査だけでなく、防犯にも役立ちます。
地域防犯に応用される犯罪者プロファイリング
関西国際大学人間科学部教授
桐生 正幸 氏
きりゅう まさゆき
1960年山形県生れ。文教大学人間科学部人間科学科心理学専修退学、学位授与機構より「学士(文学)」、ポリグラフ検査の研究により「博士(学術)」を取得。山形県警察本部科学捜査研究所主任研究官を経て現職。同大防犯・防災研究所長。日本犯罪心理学会理事、日本応用心理学会理事、日本法科学技術学会評議委員。主・共著に『犯罪捜査場面における虚偽検出検査の研究』、『ウソ発見』、『犯罪に挑む心理学』、『幼い子どもを犯罪から守る!』(いずれも北大路書房)、『嘘と騙しの心理学』(有斐閣)、『応用心理学事典』(丸善)。役に立つ犯罪心理学実践に向け、ポリグラフ検査、犯罪者プロファイリング、子供の防犯など、広範囲な研究・調査を実施している。趣味は詩を作ることとおいしいラーメン探し。
2009年11月号掲載
テレビドラマの中だけの話ではない犯罪者プロファイリング
──近頃、「犯罪者プロファイリング」を題材にしたテレビドラマや映画が多いように思います。
先生は、山形県警の科学捜査研究所で実際のプロファイリング捜査に携わり、現在では犯罪心理学や防犯などの研究や調査を行なっていらっしゃいます。
今回は先生のご研究分野でもある「犯罪者プロファイリング」についてお話を伺いたいと思っておりますが、その前に、「犯罪者プロファイリング」の定義についてお教えいただけないでしょうか。
桐生 「プロファイリング(profiling)」とは、そもそも「プロフィールを作成すること」を意味します。つまり、犯罪者プロファイリングとは、犯罪現場に残された情報を分析することで、犯人特定につながる情報を提供し、捜査を支援するものです。警察庁の科学警察研究所では、「犯罪現場から得られた資料および被害者に関する情報等から、犯人の性別、年齢層、生活スタイル、心理学的特徴、犯罪前歴の有無、居住地域等、犯罪捜査に役立つ情報を提供すること」と定義しています。
──プロファイリングはいつ頃から活用されているのですか?
桐生 プロファイリングは、1970年代にFBI(米国連邦捜査局)によって初めて組織的な研究が行なわれました。人々を震撼させる快楽殺人等が発生していたことがきっかけです。FBIは連続殺人犯や大量殺人犯に面接を実施してデータを収集、犯行動機などに基づいて類型化を行なったほか、連続犯罪者の動向を捕捉するために「凶悪犯罪者逮捕プログラム」などを開発し、全米における凶悪犯罪事件をリンクして分析できるようにしたようです。
米国ワシントン州のポリスアカデミーで〈画像提供:桐生正幸氏〉 |
──犯行現場の痕跡から犯人像を描き出す手法を編み出したのですね。
桐生 はい。
英国でも「鉄道強姦魔事件」をきっかけに、1980年代から犯罪者プロファイリングが活用されています。英国の場合は犯行の場面や地域、犯人の職業など、過去の犯罪を統計学的に処理し、犯人の行動や次の犯行地点の予測などに応用しているようです。
ちなみに英国では「捜査心理学」という新しい学問領域が築かれ、目撃者に対する面接や被疑者に関する取調べ手法、犯罪者の地理的行動などさまざまな研究が実施されています。
──日本ではいつ頃から?
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