こだわりアカデミー
環境に応じて形を変える植物。 その秘められた能力は計り知れません
葉っぱの不思議を探る
東京大学大学院理学系研究科教授
塚谷 裕一 氏
つかや ひろかず

1964年神奈川県生まれ。88年東京大学理学部卒業、93年同大学院理学系研究科植物学専攻博士修了、理学博士。日本学術振興会PD特別研究員を経て、93年から東京大学分子細胞生物学研究助手。99年岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所助教授。2006年から現職。専門は葉の発生・分子遺伝学。海外でのフィールド調査や、植物の多様性についての研究も行っている。著書に『植物の〈見かけ〉はどう決まる 遺伝子解析の最前線』(中公新書)、『植物のこころ』(岩波新書)、『スキマの植物図鑑』(中公新書)など。
2014年8月号掲載
塚谷 最初は昆虫少年だったのですが、小学生の頃に転向しました。身の回りの植物を観察しては、図鑑で名前を調べることが面白くて。今も、植物に秘められたさまざまな謎を解くことが楽しくて仕方ないのですが、趣味の延長線上にいるという感じでしょうか(笑)。
大都会の「スキマ」に生きる多種多様の幸せな植物たち
──ところで、先生のご著書『スキマの植物図鑑』は非常に興味深かったです。都市の中のちょっとしたスキマに、実に多種多様な植物が生育しているのですね。私もよく、コンクリートの裂け目やアスファルトの割れ目などに生える植物を目にするのですが、ご著書には四季折々の植物ときれいな花が、数えたら110種も紹介されていて感動しました。
塚谷 ありがとうございます。10年ほど前からカメラを手にまちを歩き、撮った写真は300種以上、約1,000枚にもなります。
スキマというと、一見、窮屈で居心地の悪い場所に思えますが、実は植物にとっては楽園なんです。
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2009年4月、東京都で撮影した「カタバミ」。春から秋にかけ黄色の花を咲かせる〈写真は塚谷氏が撮影。『スキマの植物図鑑』より〉 |
──楽園?
塚谷 太陽の光を思う存分浴びられますし、アスファルトに封じられた地下は水が蒸発することもない。太陽も水も独り占めできて、しかも、他の植物とも競争しなくて済むのですから・・・。植物にとっては天国のような環境だと思いませんか?
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『スキマの植物図鑑』(中公新書) |
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