こだわりアカデミー
お茶の種子は乾燥に弱い。 ですから果実のまま日本に渡ってきたと考えられます。
お茶はどこから来たか?
農学博士 名城大学農学部教授・地方茶研究会会長
橋本 実 氏
はしもと みのる

1932年台湾高雄生れ。56年名城大学農学部農学科卒業。同大学農学部助手を経て教授に。同大学附属図書館長も務めている。農学博士。80年「茶樹の起源に関する形態学的研究」で日本熱帯農学学会賞を受賞。「地方茶研究会」を主宰し、茶の振興・普及を図る。著書に『茶の起源を探る』(88年)『Q&Aやさしい茶の科学』(共著、95年、いずれも淡交社)。
1998年2月号掲載
お茶に含まれているビタミンCは熱に強い
──今、お茶の効用などがいろいろと注目されていますね。あのO157の予防にもなるとか、これは本当かどうか分かりませんが、ガンや高血圧にも効くようなことが言われていますけど。
橋本 お茶にはタンニンと同じ性質のカテキンという成分が含まれています。お茶のあの渋味がそうです。これに殺菌作用やガンの発症を抑制する効果があると言われています。
ガンの抑制に効果があるというのはあるデータが発表されたからです。それはお茶の産地には、胃ガンの患者が全国平均よりも少ないというデータで、それでみんなが注目しだしたわけです。その後アメリカの研究者がビタミンCもガンの抑制に効果があると発表しました。お茶、特に緑茶には、たくさんのビタミンCが含まれていますし、しかも野菜に含まれているビタミンCと違って熱に強い。これからの理由からガン予防にいいと騒がれてるんじゃないでしょうか。
──これからはどんどん飲んだ方が良さそうですね。昔は「お茶を飲みすぎると顔が黒くなる」とかいわれたりもしましたが。
橋本 逆に白くなるんですよ。お茶の先生の顔を見ると、なんだか肌がツヤツヤしている人が多いと思いませんか。これはビタミンCのお陰です。特に抹茶はそのまま全部飲んでしまいますから効果大です。
──昔はお茶は貴重品だったから、あまりたくさん飲まれても困るので、そんな根も葉もないことを言っていたんでしょうか。
橋本 そうかもしれません。こんな記述が残っています。お茶が庶民にも飲めるようになったのは江戸時代に入ってからですが、「慶安のお触書」の中に、『酒を飲む女、たくさん茶を飲む女は離縁するべし』というようなことが書いてあります。
──庶民の間でも人気になってたんでしょうね。
少し話がそれますが、実は私の友人が東京の世田谷で、齋田茶文化振興財団というのをつくっているんです。ご先祖が庄屋さんで、明治維新後、それまで自家で小規模に生産していた製茶に本格的に取り組み、そのお茶が米国万博で賞を取り、米国へ輸出もしたりしていたのだそうです。この財団では記念館を運営しておりまして、そこではその当時お茶をつくるのに使った道具を保管したり、その他お茶に関係する文献を展示したりと、いろいろやっているようです。
橋本 それは貴重ですね。そういう道具があるところには「捨てないで下さい」と言って回ったくらい、今はどんどん機械化されて古い道具がなくなっていってるんです。
──日本でも中国に負けず劣らずいろんなお茶がつくられてきたんですから、やはりそういった歴史の証拠は大切にしたいですね。
今日はお話を伺っていて、お茶はわれわれにとっては、普段の生活の中では当たり前のようなものですが、そういった振興財団をつくったり、効用が調べられたりと、今ちょうどお茶が見直されている時期なのではないでしょうか。それにお茶を飲むことは一番簡単な健康法のようですから、私自身ますますお茶を飲む回数が増えそうな気がします(笑)。
本日はありがとうございました。
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