こだわりアカデミー
自然の岩肌に動物の絵画。 世界最古のショーヴェ洞窟で芸術のビッグバンが起こった!
洞窟壁画こそ「芸術」の起源
鳴門教育大学美術科教授
小川 勝 氏
おがわ まさる

1956年京都府生まれ、85年大阪大学大学院文学研究科芸術学専攻博士前期課程修了(文学修士)、88年同大学院博士後期課程単位取得退学、95年鳴門教育大学学校教育学部助教授、2008年より同大学准教授、13年より現職。世界の先史岩面画の制作年代などの研究を行ない、特にフランコ=カンタブリア美術の洞窟壁画に関してその造形空間を現象学的観点から考察している。
2016年3月号掲載
小川 はい。だから、動物の壁画も当時の人が最も関心を持つものが描かれ、皆でそれを眺めていたという意味で、紛れもなく芸術なのです。つまりそのことにより、現存する芸術の中で一番古くからある芸術は、洞窟壁画だということになります。
そして、その数ある洞窟壁画の中で最古のものこそ、きっと芸術の「起源」に違いないと、私は確信しています。
──つまり、先ほど先生がおっしゃられた、人類が初めて足を踏み入れて、ランプの光で動物の姿をなぞった壁画が、その起源だということになりますね。
そういえば、何年か前に約3万年前の洞窟壁画が見つかったとか。確か最古と言われていたのでは?
小川 はい。1994年に発見された約3万2000年前のショーヴェ洞窟壁画です。まさにここが起源だと考えています。フランス南部のアルデシュ渓谷というところで偶然見つかったものです。それまでに約2万〜1万5000年前までのものはたくさん見つかっているのですが、3万年以上前のものは初めてです。
ショーヴェの洞窟壁画も素晴らしい躍動感に溢れたものでした。その後に描かれたアルタミラやラスコーと比べても、遜色ない表現力があります。
そのことから考えて、おそらく最初に岩をなぞった段階から、絵としての表現力が非常に高い。芸術はこのとき突然生まれたと言えるのではないかと私は考えています。
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ショーヴェ洞窟壁画の「Les rhinoceros affrontes(相対するサイ)」〈(C)Dr.Jean Clottes〉。2頭の向い合うサイの緊迫した戦いの様子が描かれている |
──3万年前に突然生まれた? そしてその時点で芸術として完成していたと? なぜそう思われるのでしょう?
小川 私は、芸術は、稚拙なものから発展したのではなく、それなりに完成度の高いものがいきなり出てきたと考えているんです。「芸術のビッグバン」と例えているんですが…。
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