こだわりアカデミー
汚れを防ぎ除菌、消臭、清掃作用も。 「光触媒現象」を大発見、多分野で実用化
汚れない外壁、曇らないガラスのわけは?
東京理科大学学長
藤嶋 昭 氏
ふじしま あきら

1942年東京都生まれ。71年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。75年東京大学工学部講師、76〜77年テキサス大学オースチン校博士研究員。78年東京大学工学部助教授、86年同学部教授を経て、95年東京大学大学院工学系研究科教授。2003年(財)神奈川科学技術アカデミー理事長、同年東京大学名誉教授、05年東京大学特別栄誉教授、06年日本化学会会長。10年より現職の東京理科大学学長に就任。著書に、『光触媒のしくみ』(共著・日本実業出版社)、『時代を変えた科学者の名言』(東京書籍)、『光触媒が未来をつくる』(岩波書店)、『理系のための中国古典名言集』(朝日学生新聞社)ほか。
2016年10月号掲載
植物の光合成と似た現象。われわれの身近にもその技術が
──先生は酸化チタンを用いた光触媒現象を発見し、現在の光触媒技術の礎を築いた第一人者だと伺っています。論文の引用回数が1万回以上にも及んだことで2012年トムソン・ロイター引用栄誉賞も受賞されているとか。
藤嶋 ありがとうございます。世界中のさまざまな分野の研究者や技術者が、光触媒現象の活用に注目してくださっていることを実感しています。
──ただ、光触媒という言葉はよく耳にしますが、具体的にどういう現象で、どういうものに使われているかとなると、ちょっとイメージが…。
藤嶋 浮かびにくいかもしれませんね(笑)。でも皆さんは案外、そうとは知らずに光触媒技術を目にされているんですよ。例えば、街中の高層ビルの外壁タイルや窓ガラスなどに利用されており、建材の表面に光触媒の働きを持つ物質をコーティングすることで、汚れを防いだり曇りにくくすることができているのです。清掃作業のしにくい場所でも太陽光さえ当たればきれいな状態が保てるわけです。東京駅八重洲口のグランルーフの大屋根にも使われているんですよ。
![]() |
光触媒技術が用いられている東京駅八重洲口のグランルーフ。大屋根の表面に光触媒の働きを持つ物質をコーティングすることで、白い屋根でも汚れが目立たず、きれいな状態を保つことができる |
──光に当てるだけで? それはありがたい効果ですね。
![]() |
藤嶋 昭先生は、2018年に同大学栄誉教授になられました。
サイト内検索