こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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アマゾン川流域で発見された巨大古代遺跡からは 自然と調和した高度な文明社会がうかがえます。

ボリビア・アマゾンの古代文明

人類学者 立教大学社会学部教授

実松 克義 氏

さねまつ かつよし

実松 克義

さねまつ かつよし 1948年佐賀県生れ。70年日本大学文理学部卒業後、78年カンザス大学大学院修士課程修了。日本電気国際研修所講師、アテネフランセ講師を経て90年に立教大学講師に着任、現職に至る。シャーマニズムおよび古代文明の研究をライフワークとし、主に中米のマヤ、アンデス、アマゾン地域においてフィールドワークを行なう。専門は宗教人類学。主な著書に『マヤ文明 聖なる時間の書』(現代書林)、『マヤ文明 新たなる真実』『衝撃の古代アマゾン文明』(ともに講談社)、『アンデス・シャーマンとの対話』(現代書館)などがある。

2005年12月号掲載


アマゾン川流域に古代文明の痕跡。埋もれていた第5の大河文明

──先生のご著書『衝撃の古代アマゾン文明』を拝読して大変驚きました。

南米の文明といえばインカ、アステカ、マヤなどだと思っていましたが、世界最大の流域面積と熱帯雨林を持つことで知られているあのアマゾン川流域にも、それはそれは高度な巨大文明があったそうですね。

実松 そうなんです。これはまだ、日本ではほとんど知られていないことなんですが、アマゾン川全域に渡って、信じられないぐらい高度で古い文明の遺跡や痕跡が、いたるところで発見されています。中でも最大規模の遺跡がボリビアで確認されています。

ボリビアアマゾンといえば、アマゾンでも大分上流の方ですよね。

実松 はい。アンデス山脈の東側で、アマゾン川河口から約4千数百kmの所に「モホス大平原」と呼ばれている海抜200m程の低地があります。ジャングルではないこのアマゾン流域一帯に、巨大な遺跡群があるんです。その広さは25万km2にも及びます(上図参照)。

──25万km2というと、ちょうど本州ぐらいの広さですよね。そこには、どのような遺跡があるのですか?

実松 アマゾン川流域で遺跡が見付かっているところは皆そうなのですが、このモホス大平原は雨期になると冠水し、乾期になると平原になるという特殊な地域です。こういった所では、いかに水をコントロールするか、といったことが重要になります。そして、水をコントロールする高度な技術を、どうやら古代人は持っていたようなんです。

──具体的にはどのような方法ですか?

実松 雨期になると氾濫原になりますから、居住地や耕作地が冠水しないようにしていました。それは、盛り土をして居住地や高められた耕地を作ったりする土木技術です。人工的に高められた古代人の居住地跡は「ロマ」(スペイン語で「丘」の意味)と呼ばれています。

ロマはどれくらいの規模なんですか?

実松 大小さまざまなロマがありますが、大きいものだと直径が600−700mもあります。

──その数は?

実松 2万個近く見付かっています。

──それだけの数のロマとロマを、人々はどのように往来していたんですか? 雨期には島になってしまうと思うんですが…。

実松 ロマとロマを直線で結ぶ「テラプレン」と呼ばれる道路網が確認されています。このテラプレンは放射状に延びており、雨期には島のように散在しているロマ同士を結んでいるんですよ。

──インターネットの模式図のような格好ですね。

実松 そうですね。ちなみにテラプレンの脇は運河になっています。モホス大平原にあるテラプレンの総延長は5千km以上あるともいわれています。その他、人造湖も見付かっているんです。

──人造湖もですか?

実松 はい。人造湖は2千個近く存在します。これは古代人がこの土地で農業を行なうために治水目的でつくったものなのでしょうが、どうもこの人造湖を使って、非常に大規模な魚の養殖をやっていたようだということが、最近分ってきました。

──養魚場ですか。どれくらいの大きさなのでしょうか?

実松 一番大きなものだと、正方形の湖の一辺は20kmもあります。

不思議なことに、この人造湖のほとんどは正方形、あるいは長方形で、同じ方向を向いています。その理由は現在も分っていません。その他、自然の地形を利用した養魚池で稚魚をふ化させていたような形跡もあるそうです。

──それはすごいですね。これだけ壮大な土木工事を行なっていたということは、かなり人口が多そうですね。

実松 はい。ある人の試算によると、ピーク時の人口は1千万人を超えていたのではないかともいわれています。

──土木工事の遺跡以外に、人が住んでいたという痕跡もあるのでしょうか?

発掘作業中のスタッフたち(右)発掘された甕棺(かめかん)(左)
発掘作業中のスタッフたち(右)
発掘された甕棺(かめかん)(左)

実松 はい。ロマを発掘してみると、何体もの人骨が出てくるんです。実際、今年の夏にあるロマを発掘してみたのですが、掘ると必ず何か出てくる。とにかく密度がものすごいんです。1か月くらいの期間だったので十分には掘れなかったのですが、わずかなその間に人骨が12体、甕棺が12棺出てきました。その他、無数の土器のかけらやら、副葬品等々が出てきたんです。


近著紹介
『衝撃の古代アマゾン文明』(講談社)
『アマゾン文明の研究ー古代人はいかにして自然との共生をなし遂げたのか』(現代書館)
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