こだわりアカデミー
赤ワインに含まれるポリフェノールは 悪玉コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を予防します。
体に効く赤ワイン
お茶の水女子大学生活環境研究センター教授
近藤 和雄 氏
こんどう かずお
1949年東京生れ。79年東京慈恵会医科大学卒業後、メルボルンのベイカー医学研究所へ留学。東京慈恵会医科大学青戸病院助手、防衛医科大学校講師、国立健康・栄養研究所臨床栄養部室長を経て、現職に。医学博士。日本動脈硬化学会評議員。著書に『赤ワイン健康法』(95年、ごま書房、共著)、『からだに効く赤ワインの条件』(98年、講談社−写真−)、『中性脂肪を減らす食事』(2000年、成美堂出版、共著)など。
2001年2月号掲載
「フレンチ・パラドックス」の謎を紐解く
──そもそも、なぜ赤ワインに注目されたんですか?
表3:心臓病死亡率と乳脂肪消費率 フランスでは乳脂肪を多く摂取しているにも関わらず、動脈硬化性疾患の死亡率が低い |
近藤 「フレンチ・パラドックス」をご存じですか? 欧米人はかなりの乳脂肪を摂取しているのに、フランスは欧米の他国より心筋梗塞の死亡率が低い(表3)−−その不思議な現象のことをいいます。第2次世界大戦後の疫学研究からいわれ出したことで、当初から「フランス人のワイン好き」と何か関係するのでは…と考えられていました。私もその原因を探ろうと乗り出したのですが、当時、ワインといえば白ワインしか思いつかなかった(笑)。では、白ワインの本場ドイツはどうかとなったら、「ジャーマン・パラドックス」なんて話は聞いたことがなく、そのまま原因究明の話は立ち消えてしまったんです。その話も忘れかけていた頃、フランスのルノーというワイン学者が「フランス人の多くが飲んでいる赤ワインがいいんだ!」といい出した。時期を同じにしてカリフォルニアでも赤ワインの中に抗酸化物があるのを発見したというのを聞いて、臨床実験を試みたんです。
──紆余曲折あったんですね。
その後、先生のこの研究は、赤ワインブームを引き起こすなど、大きな影響を与えました。しかし、体に良いとはいえ、赤ワインもアルコールですから飲み過ぎては意味がありませんよね。
近藤 まさにその通りです。この研究は、赤ワインの宣伝のためではありませんからね(笑)。これを通じて、なぜ赤ワインが体に良いのかを理解していただきたい。そして、ポリフェノールなどの抗酸化物は、赤ワインだけでなく多くの食物に含まれていて、それを摂取することは大切なんだということを知っていただきたいですね。
実は、植物研究の世界では、ポリフェノールに抗酸化機能があり、植物自身の身を守っていることが知られていました。しかし、それは植物にしか効かない、まして人間に取り込まれて酸化を防ぐとは思われていなかった。ですから赤ワインの研究で、食物の苦みや渋み、そして色の成分であるポリフェノールが、人間の身体に役立つことが分ったことは、栄養学の面から見ても非常に重要なことなんです。それまで教科書に「体内に吸収されない」と書いてあったほどですから(笑)。
──先生のご研究は、それまでの定説を覆す新たな発見でもあったんですね。
『からだに効く赤ワインの条件』(講談社) |
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